加飾に使用される装飾クロムめっきは、元々は鈍い金属外観を煌びやかに飾る目的で施されてきました。
そして加飾する下地は金属にとどまらず、近年では樹脂上へのめっきも盛んにおこなわれています。
この装飾クロムめっきは、表面が平滑に析出され、非常にきれいな光沢面を得ることが出来ます。
一方で、社会が習熟し、物が溢れる現代社会において、世間のニーズは他者との差別化、またより本物を求める方向へ進み、めっきへもその流れがやってきました。
めっきで表現するのは金属感ですが、世の中には多くの金属が存在し、一般的な表面処理されていない金属表面は鈍い光沢を持ちます。
その外観表現を求めて使用されているのが、ツヤ消しめっきなのです。
ツヤ消しめっきにも様々な種類があり、当社では数十年前からベロアめっき、パールめっき、サチライトめっきを量産して参りました。
そして現在ではヨーロッパでも主流のサテンめっきを導入しております。
ツヤ消しめっきの仕組み
ツヤが消えて見えるのは、なぜ?
人は物を見るとき、その物から反射された光を受けて色・形・ツヤ等を判断しています。
物に当たる光が鏡の様にそのまま反射される(正反射)と強い輝きを放ち、ツヤのある表面に見えます。
一方で、石の様に表面が凸凹していると、凹凸面に当たる光は色々な方向へ拡散反射され、ツヤが無い表面に見えます。
樹脂上の装飾クロムめっきの構成は、下から 樹脂→銅→ニッケル→クロム の順に層になっていますが、光沢のある金属外観は、平滑な樹脂表面を銅めっきで更にレベリング(微細な凹凸を平面に整える)し、ニッケル→クロム と重ねることで均一な平面を作ることで得られます。
逆に、ツヤが消えためっきは、通常はめっき膜で表面状態を整える所を、めっき膜で凸凹を作ることで光を拡散反射させています。
それにより、”めっき”だけど”ツヤ消し”の表現が可能となるのです。
どうやってめっきでツヤが消えた表面を作っているの?
では、どうやってめっきで凸凹の表面を作っているのでしょうか。
先に紹介した様に、樹脂めっきは大まかに 銅・ニッケル・クロム の3層から成り立っています。
その中で、凸凹を形成しているのは、中間のニッケル層になります。
また、そのニッケル層も通常は下から半光沢ニッケル、光沢ニッケルと重なりますが、
サテンめっきではこの光沢ニッケルが ”サテンニッケル” に置き換わり、このサテンニッケル層で凸凹を作ります。
もう少し具体的に説明します。
サテンニッケル液はエマルジョンと呼ばれる添加剤が液中に分散した状態のめっき液になっています。
本工程は電気めっきですので、製品に電気が流れるとめっき液中のニッケルイオンと電子交換が行われ製品表面にニッケルが析出する訳ですが、エマルジョン中の添加剤はその通電中に製品の表面にくっ付いたり、離れたりを繰り返しています。
すると何が起こるかというと、製品表面で添加剤が付着した部分はニッケルイオンとの電子交換が行われない為ニッケル金属が析出せず、隣接する普通にめっきされた場所とで段差が発生します。
ただ、その添加剤は直ぐに離れますのでその凸凹が出来たままニッケル層が成長していきます。
その一連の流れが通電中繰り返されることで、表面に凸凹が形成されるのです。
ツヤの消え具合は、どうやって調整しているの?
ツヤが消えるのは、サテンニッケルめっき層で凸凹を形成している為と分かりましたが、それではツヤの消え具合はどの様に調整しているのでしょうか。
ツヤの消え具合を変えるには、要するに拡散反射の仕方が変われば、つまり凸凹の具合が変わればいいわけです。
その凸凹の具合を変えるには、主に2つの方法があります。
一つ目は、凸凹の変化量を変えることです。
凸凹が出来るのはエマルジョン中の添加剤がめっき反応中に付いたり離れたりして出来ますが、その反応量を大きくすれば多くの凸凹が生成され、小さくすれば凸凹も少なくなります。
それにより拡散する光の反射具合も変化します。
二つ目は、一つの凸凹の大きさ自体を変えることです。
添加剤の大きさはめっき薬品にて設計されていますが、その薬品を変更することでそもそも作られる凸凹のサイズが変わります。
それによりやはり拡散反射光も変わります。
この二つを組み合わせて調整することで、ニーズに合わせてツヤを調整しています。
柿原工業のサテンめっきの活用例
当社では、サテンめっきのツヤの消え具合を3段階に分け、ツヤのある方から
①ライトプラチナサテン®
②プラチナサテン®
③サンドプラチナサテン®
を用意しております。
また、このサテンニッケルと最表面のクロムめっきの色を組み合わせることで、様々なパターンの外観を表現することが可能となります。
詳細につきましては、当社ホームページ内や、ダウンロード資料にて紹介しておりますので、是非ご覧下さい。
また現物をご覧になりたい方は、サンプル帳等の準備も可能です。装飾めっきは見た目の印象に大きく影響を与え、その質感を感じて頂くには現物をご覧頂くのがベストです。
当社のめっき品を活用頂き、御社の製品に一つの”きらめき”を付与出来れば幸いです。