電磁波シールド(EMI シールド):塗料とめっき、鉄板の効果的な選択肢
現代の技術社会では、電磁波シールドの重要性が増しています。電子機器が発する電磁波が周囲のデバイスに悪影響を与えるのを防ぐため、さまざまなシールド技術が開発されています。
特に注目されているのは塗料とめっき技術、そして鉄板を用いたシールドです。それぞれの選択肢について詳しく見ていきます。

電磁波シールド塗料
電磁波シールド塗料は、銅、銀、ニッケルなどの導電性粉末を含む特殊塗料で、スプレーやローラーで簡単に塗布でき、柔軟なシールド手段です。
特に複雑な形状にも適しており、小型電子機器や家庭用製品に広く利用されています。
メリット:
- 簡便な施工とコスト効率
- 幅広い周波数帯域のノイズ対策に最適
デメリット:
- 耐久性が低く、過酷な環境では劣化しやすい
- 塗布の均一性がシールド効果に影響する

電磁波シールドめっき
めっき技術では、製品表面に金属層を形成し、高い電磁波シールド効果を発揮します。
銅、ニッケル、鉄ニッケル合金などの金属が使用され、耐摩耗性・耐腐食性に優れ、長期間の使用にも耐えます。
メリット:
- 高いシールド効果と耐久性
- 信頼性が高く、産業用機器に最適
デメリット:
- 専用設備が必要でコストが高い
次に、鉄板とのメリット・デメリットを見てみましょう。
鉄板を用いた電磁波シールド
鉄板は、特に低周波電磁波に対して優れた効果があり、安価で大量生産が可能です。
鉄板は頑丈で、機械的強度が求められる用途に適しています。
メリット:
- 高い磁気シールド効果、特に低周波電磁波に強い
- コスト効率が良く、機械的強度に優れる
デメリット:
- 重量があり、軽量化が難しい
- 錆や腐食が発生しやすく、設計の柔軟性に欠ける
樹脂めっきを用いた電磁波シールド
樹脂めっき技術では、プラスチック素材に金属薄膜を施すことで、軽量ながら高いシールド効果を発揮します。
銅、ニッケルの金属を使用すれば、高周波帯域でのシールド効果に優れています。
鉄ニッケル合金であれば、低周波帯域でのシールド効果に優れます。
樹脂めっきは腐食にも強いのも特徴です。
メリット:
- 軽量で設計自由度が高く、腐食に強い
- 高周波帯域での安定したシールド効果
デメリット:
- コストが高く、鉄板に比べると耐久性が劣る

塗料とめっきの比較と選択
用途や目的に応じて、どのシールド方法を選ぶかが決まります。
例えば、高周波帯域の製品には樹脂メッキや塗料が適していますが、低周波シールドや機械的強度が必要な環境では鉄板やめっきが優れた選択肢です。
産業用機器や長期間の信頼性が求められる場合には、めっき技術が最も有効です。
コストや設計の自由度も考慮して、最適なシールド技術を選ぶことが重要です。
塗料 | 樹脂めっき | 鉄板 | ||
シールド性 | 低周波 | △ | 〇 (鉄ニッケル) | 〇 |
高周波 | 〇 | 〇 (銅ニッケル) | △ | |
軽量性 | 〇 | 〇 | △ | |
耐久性 | △ | 〇 | 〇 | |
耐腐食性 | 〇 | 〇 | △ | |
形状の自由度 | 〇 | 〇 | △ | |
コスト性 | △ | △ | 〇 |
応用例とメリット
樹脂めっき技術は自動車、電子機器、通信機器など、さまざまな分野で応用されています。
- 自動車部品:軽量かつ強度が求められる部品に適用し、燃費と耐久性を向上。
- 電子機器のシールドケース:外装ケースに樹脂めっきを施し、電磁波干渉を防ぎます。
- 通信機器:アンテナやセンサーに使用し、性能向上と軽量化を実現。
- モーターやバッテリー:高電力機器に対する電磁波シールドとして使用。
- 外装ケースのシールド:外部からの電磁波干渉を防ぎ、内部部品を保護します。
技術の進化と未来展望
柿原工業では、樹脂めっき技術の進化を目指して研究開発を続けており、新素材の導入によりシールド効果の向上とコスト削減が進められています。
技術革新により、効率的で信頼性の高い EMI シールドがさらに普及し、さまざまな産業分野での応用が期待されています。
