めっき工程では、さまざまな金属塩や薬品を使用します。
そのため、工程から発生する排水は、水質汚濁防止法や下水道法などの法令に基づき、定められた基準値以下に処理してから排出する必要があります。
プラスチックめっきで発生する排水
当社が生産しているプラスチックめっきでは、樹脂製品に金属のめっきを施します。
プラスチックは電気を通さないため、いきなり電気めっきをすることはできません。
まず、化学めっきによって製品の表面に導電性を持たせる必要があります。
また、プラスチック素材とめっき皮膜の密着性を高めるため、クロム酸を使用したエッチング処理も行います。
その後、電気を通せる状態になった製品に対して、銅、ニッケル、クロムの順番で電気めっきを施します。
クロムめっきでは、六価クロムまたは三価クロムを主成分とするめっき浴を使用します。
このように、複数の工程を経てプラスチックめっきが完成しますが、その一方で、各工程からさまざまな種類の排水が発生します。
当社では、これらの排水を性質に応じて、主に次の3系統に分けて処理しています。
① 酸・アルカリ系排水
② 合金(キレート)系排水
③ クロム系排水
これら3系統の排水は、それぞれ混ざらないよう完全に分離して排出し、適切な排水処理を行っています。
3種類の排水は、どのように処理されるのか?
ここからは、プラスチックめっきの工程で発生する3種類の排水について、それぞれどのように処理しているのかをご紹介します。
①酸・アルカリ系排水の処理
酸・アルカリ系排水は、めっき前の水洗や活性化工程、また、クロムめっき以外の銅・ニッケルめっき工程における回収・水洗などから発生します。
これらの排水には、金属がイオンの状態で含まれています。そこで、水酸化ナトリウムを加えて中和することで、金属を沈殿させ、固体として分離します。
ここでポイントとなるのが、プラスチックめっきの前処理で使用するパラジウムです。
パラジウムは貴金属の一種で、化学めっきの触媒付与工程で使用されます。
そのため、排水処理によって分離されたスラッジ(固体)には、パラジウムが含まれます。
当社では、このスラッジを貴金属のリサイクル資源として回収・販売しています。


②合金(キレート)系排水の処理
プラスチックめっきの前処理工程の一つである化学ニッケルめっきでは、キレート成分を多く含むめっき液を使用します。
キレート成分は金属イオンと強く結合する性質があるため、そのままでは金属を沈殿させて分離することができません。
そこで、当社ではフェントン酸化法を用いてキレート成分を分解します。
フェントン酸化法とは、第一鉄イオンと過酸化水素水を利用して、キレート成分などの有機物を強力に酸化分解する処理方法です。
キレート成分を分解した後、金属を沈殿させることで、排水から分離することができます。
また、三価クロムめっきや、金属めっきで使用される亜鉛ニッケル合金めっきにも、強力なキレート剤が含まれています。
そのため、これらの工程から発生する水洗排水についても、フェントン酸化法による処理を行っています。
③クロム(六価クロム)系排水の処理
六価クロムは排水基準でも厳しく規制されています。
2024年4月1日から、六価クロム化合物の一般排水基準は0.2mg/L以下に強化されました。
一方、電気めっき業に属する特定事業場については、暫定措置として0.5mg/L以下の基準が2027年3月31日まで適用されています。
なお、この暫定基準は、下水道へ排水する場合にも同様に適用されます。
このように厳しく規制されている六価クロムですが、排水処理ではどのように処理されているのでしょうか。
六価クロムは、重亜硫酸ナトリウムを使用して三価クロムへ還元します。
その後、アルカリによって中和することで三価クロムを沈殿させ、排水から分離します。
めっき企業にとって、排水処理は「縁の下の力持ち」
ここまでご紹介したように、めっき企業では、日々発生する排水を適切に処理し、規制値を満たした状態で放流することが求められています。
排水処理は、ただ設備を動かしていればよいというものではありません。
排水に含まれる各規制物質の濃度を毎日測定し、適切に処理できているかを継続的にモニタリングすることが重要です。
また、処理ラインに入ってくる原排水の状態に異常がないか、処理設備が正常に機能しているかなど、日々の監視も欠かせません。
万が一、排水処理設備の故障や処理異常によって規制値を超える排水を放流してしまうと、行政処分などにつながり、操業に大きな影響を及ぼす可能性があります。
特にめっき工場では、排水処理が製造工程の最後を支える重要な設備となっています。
排水処理が停止すれば、製造ラインを稼働させ続けることもできません。
製品をつくる製造設備ほど目立つ存在ではありませんが、排水処理設備は、工場の安定した操業を支える**「縁の下の力持ち」**です。
環境への負荷を抑え、法令を遵守しながら安定した生産を続けていくためにも、排水処理設備を確実に稼働させ、日々の監視と管理を継続していくことが、めっき企業にとって非常に重要なのです。
弊社では環境先進企業を目指し、ISO14001認証に基づいて万全の体制を整えており、また、資源リサイクルにも積極的に取り組んでいます。










