塗装工程で発生する“塗着しない”塗料の無駄
塗装の最大の悩みどころ、「廃棄塗料」
スプレー塗装では、噴霧した塗料のすべてが製品に付着するわけではなく、製品に付かなかった塗料はブース内に飛散し、そのまま廃棄物として処理されます。
樹脂部品や金属部品の塗装に携わる現場にとって、その様な「塗着せずに捨てられる塗料」は昔から変わらない大きな課題です。
塗料費・廃棄物処理費・VOC(揮発性有機化合物)対応のいずれにも直結するため、多くの現場が塗着効率の改善に取り組んできました。
それでも「これ以上はどうにもならない」と、一定の廃棄を前提にコストを組んでいるケースが多いのではないでしょうか。
スプレー塗装では、塗料の大半が製品に付かない
では、実際にどれくらいの塗料が捨てられているのでしょうか。
設備メーカーの流体解析によると、従来のスプレーガンを動かして塗るロボット塗装では、噴霧した塗料の約70%が製品に塗着せず廃棄されているという結果が出ています。
歩留まりで言えば3割程度。塗料費の大半が、製品ではなくブースの壁とフィルターに向かって支払われている計算です。
なぜ塗料が無駄になるのか?3つのメカニズム
塗料の無駄は、ロボットによるスプレー塗装の原理そのものに起因しています。
①折り返し点でのオーバースプレー。
ガンを左右に往復させて塗る方式では、折り返し点で製品のない空間にも塗料が噴霧され、そのまま無駄になります。②ミストの拡散と減速。
ガン自体が高速で移動すると、噴霧されたミストが乱れて拡散し、粒子の速度も落ちます。その結果、製品に届く前に漂ってしまい、塗着しにくくなります。③ワーク間を通過するミスト。
複数の製品を並べて塗装する場合、製品と製品の隙間を通り抜けるミストが必ず発生し、一定割合の塗料が無駄になります。いずれも「ガンを速く動かし、吐出量を増やして生産数を稼ぐ」という従来の発想では避けられない構造的な問題です。
生産性を上げようとするほど塗装条件が変わり、品質との両立も難しくなります。
発想の転換:「ガンを動かす」から「ワークを動かす」へ
この構造的な無駄を減らす手法として注目されているのが、ガンではなくワーク(製品)側を回転させる「スピンドル塗装(回転塗装)」です。
ガンを固定してワークを回転させると、噴霧が乱れずミストが安定し、粒子速度も維持されるため、塗着確率が上がります。
ワーク間の隙間を通過するはずだったミストも、移動してくる次のワークが拾ってくれます。
設備メーカーによる流体解析では従来のワーク固定タイプのロボット塗装では約70%の塗料が廃棄されていたものが、スピンドル塗装では約50%まで下がるという結果が示されています。
さらに、薄い塗膜を何度も塗り重ねる原理のため、少ない塗料で均一かつ良好な仕上がりが得られるという品質面のメリットもあります。
塗着効率の向上は、コスト以外にも効く
塗着効率の改善効果は、塗料費の削減にとどまりません。廃棄塗料が減れば産業廃棄物の処理費用が下がり、VOCの排出削減にもつながるため、環境対応・SDGsの観点でも有効です。
また、スピンドル塗装は均一な塗装を高速で行えるため、品質の安定と生産性の向上と同時に塗料の削減も実現できます。
まとめ
塗装ロスというとコストにも影響してきます。
製品の形状、生産数、コート数を加味し、塗装方法の見直しをすることで品質、生産性の向上だけでなくコスト削減にもつながります。
柿原工業では、塗着効率に優れたスピンドル塗装ラインにより、高品質・大量生産・環境対応を両立した塗装を提供しています。
塗装コストや工程の見直しをご検討の際は、お気軽にご相談ください。








